獅子ヶ谷市民の森
散策:2004年01月中旬
歴史と緑の散歩道
一本の道には歴史がひそめられています。 道は人びとの暮らしを、長い間見つづけてきました。 いつもは何気なく通りすぎてしまうこの道のうえでふと立ち止まって耳をすますと、 木もれ陽のなかから、なつかしい声が語りかけてくるようです。 道は林や草むらにめぐる季節の色を映し、いくつもの道を出会いながら、限りなくつづいています。 「歴史と緑の散歩道」は、駒岡町の兜塚から獅子ヶ谷市民の森にかけてつづく眺望のよい尾根道です。 この道はかつての鎌倉街道下ノ道という重要な街道だったといわれています。 散策道の周辺には、遺跡や古墳など古代の人びとのくらしのあとや、 昔から人びとの厚い信仰心に支えられてきた神社・寺・石仏など、 歴史をしのばせるものがたくさん残っています。 そして、三ッ池公園や市民の森をはじめ雑木林や畑などがひろがっていて、 いろいろな植物や野鳥に出会うことができ、四季おりおりにかわる自然のいきいきとした表情がみられます。
道のうつりかわり
道は人びとのくらしかたが変わるにつれてその姿をかえてきました。 昔から人びとのくらしを見つめつづけてきました。 今から数千年前の人びとは、木の実やけものをとったり、海で魚や貝をとってくらしていましたが、 そのために同じところを何度も行き来するうちに道ができるようになりました。 農耕がはじまると、人びとはきまった場所でくらしはじめ、自分のところでとれたものを おたがいに交換するようになり、村と村を結ぶ道がしだいにのびていきました。 やがて国が統一されると、いくさのためや地方の産物を中央に運ぶために大きな道がつくられるようになり、 広い地域にひろがっていきました。 鎌倉幕府が開かれてから、地方と鎌倉を結ぶ道がいくつかつくられました。 「歴史と緑の散歩道」はそのうちのひとつ、鎌倉街道下ノ道だったといわれていますが、 この下ノ道は鎌倉から保土ヶ谷や川崎の丸子を通って常陸(ひたち)方面へまでつづいていたようです。 この道のうえを、地方の産物が運ばれたり、早馬の武士たちがかけぬけていったのかもしれません。 やがて時代がうつるにつれて、街道としての役割はしだいに失われていきましたが、 今はわたしたちの生活に欠かせない道となっています。 「歴史と緑の散歩道」には、わたしたちの街の歴史と自然のものがたりがおりつづられています。
歴史・文化遺産
◎遺跡・古墳
けものや貝などをとってくらしていた昔の人びとが骨や貝殻などを捨てたところが貝塚です。 この頃は縄文時代といわれ、貝塚からは当時の土器もみつかっています。 散歩道付近には梶山貝塚・菊名貝塚などがあります。 弥生時代には農耕がはじまり、鉄器も使われるようになります。 この時代の梶山遺跡からは土器にまじって銅でつくった鏡も発見され、 上台北遺跡からはめずらしい人面土器が出土し、二ッ池遺跡では数多くの住居址がみつかっています。 古墳時代になると村むらもしだいに大きくなります。 この頃のお墓だといわれる兜塚古墳・三ッ池古墳・横穴古墳群などが発見されました。
◎神社
散歩道の近くには駒岡稲荷社・駒岡神明社・駒岡八幡社・獅子ヶ谷上神明社・獅子ヶ谷下神明社があり、 村の鎮守として大切にされてきました。そのほかには、駒岡町の浅間神社や上の宮八幡神社などがあります。 この中には今も講や祭がおこなわれているところもあり、人びとの生活に深くとけこんでいます。
◎寺
散歩道周辺にあるほとんどの寺は江戸時代以前に開山されたものです。 駒岡町の正行寺・常倫寺・長松寺、獅子ヶ谷町の光明寺・本覚寺、上の宮の宗泉寺などがあります。 豊かな緑に囲まれて静かなたたずまいをみせているこれらの寺には、 信仰にまつわる伝説や歴史をものがたる仏像・つりがね・石仏など、いろいろなものが残されています。 昔から、寺が村の人びとの生活に深くかかわりながら、心のささえとなってきたことがしのばれます。
植物と野鳥
◎兜塚から三ッ池公園付近
尾根をとおる散歩道を歩いていくと、あたりの自然が季節のうつりかわりをおしえてくれ、 わたしたちのくらしている街の風景のいろいろな表情を見つけることができます。 道に沿った斜面の雑木林には、クヌギ・コナラ・ミズキ・ケヤキ・シラカシ・スダジイ・クロマツなどがそだち、 四季おりおりに姿をかえる落葉樹と、一年中緑の常緑樹との美しい対照を見せてくれます。 神社や寺の周囲にひろがる緑の中には、スダジイ・ケヤキ・モチノキ・ヤブツバキ・ミズキなどの大木がみられ、 駒岡八幡社のイヌツゲ、常倫寺のイチョウ・ツバキをはじめ、名木・古木として大切に まもられているものもあります。近くの畑では、農家の人たちのたんせいこめた手で、 ダイコン・キャベツ・ソラマメなどの野菜が栽培されています。 すりばち状に緑のひろがる三ッ池公園には百種類以上の樹木があり、 なかでもサクラは1500本を数え、その他にはツツジ・ハナモモ・ツバキなどが目につきます。 よく手入れされた花だんには四季の花がたえず、訪れる人の目を楽しませています。 豊かな自然に恵まれている三ッ池公園の周辺では、たくさんの野鳥がみかけられます。 春から初夏にはウグイス・シジュウカラ・メジロ、秋から冬にかけてはタヒバリ・ツグミ・ハクセキレイ・ アオジ・ホオジロ・カシラダカなどが訪れ、このあたりではめずらしいトラツグミやシメも 観察されたことがあります。公園の池にはいつもカイツブリが泳ぎ回り、 冬になるとマガモ・カルガモ・オナガガモなどの群れが姿をみせます。
◎二ッ池と獅子ヶ谷市民の森
散歩道のほぼ中間の位置に二ッ池があります。 この池は長い間駒岡・獅子ヶ谷の田畑をうるおしてきました。 いまでは家がたちならび、風景は変わってしまいましたが、池にはさまざまな水辺の鳥が訪れてきます。 4月から10月にかけて、最近ではめずらしくなったバン・コアジサシ・オオヨシキリ・ササゴイ・イソシギなどが 池の小魚をとる姿がみかけられます。 コイ・フナ・ウナギ・クチボソなどのいる池は、むかしも今も子供達の楽しい遊び場所になています。 すみついているアヒルやカイツブリの泳ぎまわる水辺には、アシ・ガマ・オモダカなどの 水生植物がゆるやかに水面をわたる風にゆれています。 獅子ヶ谷町には豊かな自然が残されています。 マツ・スギ・ヒノキ・コナラ・エゴノキなどが生い茂る山は、 自然の地形を生かした遊歩道がつくられ、市民の森として親しまれています。 春から秋にかけていろいろな昆虫が動きまわり、森はいきいきした姿をみせてくれます。 市民の森の周辺の畑ではダイコンやキャベツの美しい緑の縞模様が波うつようにひろがり、 平地では水田も耕作されています。この田園の一角にある、今ではほとんど見かけられなくなった 茅ぶきの農家の門は長屋門といわれ、江戸時代のおもかげをいまにとどめています。 市民の森を中心としたあたりでは、一年を通してたくさんの野鳥の姿をみることができます。 ツバキの花の蜜をすうメジロ、秋の深まった森の中に鋭い声をひびかせるモズなどをはじめとして、 ハクセキレイ・ホオジロ・カシラダカ・ツグミ・タヒバリ・ウグイス・アオジ・シジュウカラ・ コジュケイ・オナガ・ジョウビタキなどがとびかっています。 冬にはシラサギの舞う姿も見られます。