毘古コラム(8)
毘古コラム (散策していて興味を引かれた事などを綴っています)
緑の黒髪
谷筋に建つ小屋の横にある空地で見かけた野晒しの畳です。
かなり以前から置かれたままになっているようで、上面には草が生えていました。
堆肥にするために畑の脇に積まれているのは時折見かけたりしますが、
近くに畑はなさそうだし、この畳はどうなのでしょう。
しばらく眺めていると、人間の髪の毛のように思えてきました。
前髪が少し後退し始めた頭のようで、何だか可愛らしくもあります。
まさしく艶々として美しい「緑の黒髪」なのでした。
生命の力
山道の真ん中で見かけた木の株です。
かなり前に倒れたようで、幹の部分は土に帰って洞になっていますが、
根はそのままに残っていて、しっかりと大地に張っていました。
まだ生命力が残っているのか、生き生きとしているように見えました。
この木は実を結んで子孫を残せたのでしょうか。
また何処からか芽を出して、元の姿へと育っていくのでしょうか。
生命の輪廻と力強さを想いながら、しばらく眺めていきました。
守り獅子
神社の床下にある柱に取り付けられていた彫刻です。
江戸末期に社殿が再建された時に施されたもののようです。
木彫りの獅子でしょうか、少し口を開けて周囲を睨み付けています。
鬣や手の指なども細かく表現されていて、市民文化資産にもなっているようです。
虹梁、欄間、拝殿天井などにも施されていて、総数は230を超えるのだそうです。
参道や境内などで見かける狛犬と似ているようにも思えますが、
神聖な社殿に悪霊が入り込まないように、彼方此方で見張っているのでしょうか。
まあるい心
街中にある地蔵尊の祠の中で見かけたミニタオルです。
布がよじれていたので形が少し歪んでいますが、
満願の笑みを湛えたお地蔵さんを円で囲んで、
まあるい心で生きていきたい』とのメッセージが添えられています。
何とも可愛らしい表情をしていて、慈悲に溢れたお地蔵さんではあります。
すさんだ心をふんわりと優しく包んでくれそうに思えてきます。
いつもこのような「円い心」で暮らせたら、どんなに喜ばしいことでしょう。
(石鳥・流木作家の「にわぜんきゅう」氏の作品で、ネット販売もされているようです)
悔し涙
橋の欄干で見かけたカエルの銅像です。
軍配を持ったり、仕切をしたり、組み合ったり、勝ち名乗りを受けたりしているものなど、
相撲に関する像が並んでいる中のひとつです。
負け残りなのか、支度部屋に戻ってからなのか、胡座を組んで泣いているようにも見えます。
勝負に負けて悔しいのでしょうか。
一生懸命にやった者だけが流せる悔し涙なのでしょう。
川とカエルとの関係はよく分りませんでしたが、橋を渡るのが楽しくなる像たちでした。
森の祭典
街中を歩いていて、民家の前で見かけた人形です。
輪切りにした色々な太さの木を組み合わせて、上手く作られていました。
上下二段になった棚に、合わせて数10体が並んでいました。
上段のは、弦楽器・木管楽器・金管楽器などを演奏していて、
下段のは、重量上げ・槍投げ・フェンシング・スキー・ボート等々のスポーツをしていました。
脇には踊っていたり、乗馬をしているものもありました。
皆よく出来ていて、まるで魂が籠もっているように見えてきます。
森の精たちが姿を変えて出てきてお祭りをしているように思えて、しばらく眺めていきました。
精霊馬
田んぼが広がる谷戸の道端で見かけました。
キュウリやナスに割り箸を刺した精霊馬です。
私が子供の頃の故郷では、仏前に供えた食べ物や精霊馬などを藁で造った舟に乗せ、
立てた蝋燭に火を灯して川に流したものですが、今ではそんな風習は見られなくなりました。
キュウリは馬を表して、御先祖様を少しでも早く迎えられるように、
ナスは牛を表して、できるだけのんびりと帰って頂くようにとの願いを込めたものでしょうか。
脇には綺麗な造花もお供えされていて、お盆の行事で使われたもののようです。
今でもそんな風習が受継がれているのを見て、何だか懐かしくなりました。
宇宙の神秘
街中を歩いていて、ビルの角で見かけた丸い玉です。
縞模様が入っていて、何だか太陽系最大の惑星である木星のように思えてきました。
大きさからすると、傍にある小さい球は天王星でしょうか、それとも海王星でしょうか。
実際にはこんな近くにはないのですが、宇宙に浮かんでいる姿を想像してしまいました。
木星はガス天体ということになっていますが、長年移動しない大赤斑といい、
シューメーカー・レヴィ彗星の衝突時に観測された状況といい、
本当は厚い大気層の下には地殻があるのではないかという説もあって、
大宇宙の神秘と浪漫を感じたりしました。
賓頭廬尊佛
街中のお寺の境内で見かけた仏像で、御影石の祠の中に置かれた台座に座っていました。
「ビンズルソンブツ」という「なで仏様」で、お釈迦様の第一の高弟なのだそうです。
右手は正法の仏道に導き、左手は応量器を持ち健康を守る功徳があるとのことです。
仏像の中で唯一の触れる仏様なのだそうで、
洗心の水で清めて合掌してから、念ずる所を4・5回撫でるのだそうです。
撫でることが供養になって、花・賽銭・線香などは無用とのことです。
撫でていく人が多いのか、表面はツルツルになっていました。
森の監視人
植林帯に続く登山道を歩いていて見かけた木彫りの像です。
姿形からするとフクロウでしょうか、木の枝に止まって周囲を眺めている像で、
羽の感じや足の辺りまで、細部に渡ってしっかりと彫られています。
林業関係者が作業の合間に彫ったのでしょうか。
かなり芸術のセンスに長けた方のように思えました。
伐採した杉の木を材料にして作られていて、切り株の上に置かれていました。
大切な森の環境を壊す輩はいないかと監視しているように思えてきました。
ミニすだれ
街中の道路脇にある民家で見かけました。
サッシの窓辺に、40cm四方ほどの簾が吊り下げられていました。
方角からすると西日を避けるのが目的なのでしょうが、些かサイズが小さ過ぎるようです。
吊るす位置を頻繁に調節しないと、すぐに脇から陽が差し込んできそうです。
同じ民家の東側には普通サイズの簾が吊り下げられていたので、
わざわざ小さいのを吊るす目的があるように思えます。
『明かりは取り入れたいけど西日は絶対に嫌』という苦肉の策なのでしょうか。
何だか家の人の信条が表われた簾のように思えてきました。
冷やし波
海水浴場の波打ち際で見かけたスイカです。
流れていかないように、立てた棒に括り付け、石の重りも置かれています。
打ち寄せる波で冷やしておいて、後で食べようというのでしょうか。
しかし底を少し洗う程度にしか海水が来ていないようだし、効果のほどはどうなのでしょう。
太陽の熱で暖められる方が多いようにも思えてきます。
上まで海水が来るように、少し穴を掘って入れるとか、もう少し沖の方に置くとか、
日除けになる屋根のような物を上に被せるなど、何かひと工夫あればと思うのでした。
封じ石
寺院の境内にある苔生した石段で見かけた丸い石です。
荒縄で縛られた20cmほどの大きさで、ひとつだけポツンと置かれていました。
参道ではなく庫裡などへ通じている石段で、その先には竹矢来が設置されていました。
どういう意味なのか咄嗟には判りませんでしたが、
縄で縛ることで何かが入ってくるのを封じているのでしょうか。
『この先は一般者の立入はご遠慮下さい』という意味なのでしょうか。
立て看板に文字で書くよりも奥ゆかしく感じたりしました。
塀割り桜
桜の老大木が並木を作っている道で見かけた塀です。
幹の形に合わせるようにして切り割られていました。
塀を作った後から桜の木が割って生えてきたのではなくて、
前からあった桜並木の所に、後から家を建てたということなのでしょう。
桜を切り倒してしまう訳にもいかず、かと云って塀は作りたいし、ということで、
街並みの景観を保存していくための苦肉の策なのでしょう。
古都に暮らしていくのにも、人知れず苦労があるようです。
緑の監視人
緑道で見かけた30cmほどの銅製のモニュメントです。
同じような形のものが、階段の片側に間隔を空けて幾つか並んでいました。
解説板などは見かけなかったので、何かは分かりませんでしたが、
四隅に出ているのがヒレのように見えるので魚でしょうか。
それとも、手足のようにも見えるし尾はなかったのでカエルなのでしょうか。
中ほどに入ったヒビのような線は口のようにも見えます。
自然を壊す者がいたら飲み込んでしまおうと見張っているのでしょうか。
大きな目を上に向けて、何とも可愛らしい姿をしたオブジェなのでした。
見守る少女
旧甲州街道の道端にある小さな見本植物園で見かけました。
まだ花の咲いていない園内の苔生した岩の上にひっそりと佇んでいました。
素焼きの鉢を紐で上手く繋げて作られた20cmほどの人形です。
頭や胴体は何とか植木鉢として利用できそうな大きさですが、
手足の部分は小さすぎるので、これ用に作られた鉢なのでしょうか。
頭の襞は帽子の鍔で、胴の襞はスカートの裾のようにも見えます。
植物園をそっと見守っている幼い少女のように思えてきました。
ようすいくん
神奈川県内の山道を歩いていて、よく見かけるものです。
水が入れられた2本のドラム缶が、周囲を丸太で囲われています。
神奈川県が設置した防火用水で、「ようすいくん」という名前が付けられています。
「用水君」という意味なのでしょうか、愛らしい名前ではあります。
平成元年に森林公園や林道・ハイキング道沿いに200基余りが設置されたようです。
周囲の丸太には、防腐加工した県内産の間伐材が使われているとのことです。
「屋根を取って使うこと」と書かれた板が取り付けられていますが、
設置されてから20年も経って、かなり疲労が溜まってきているようでした。
崖の道祖神
尾根道の崖に開けられた15cmほどの穴で見かけた道祖神です。
10cmほどの丸まった小石に「道祖神」と刻まれ、袂には小銭がお供えされていました。
手前には竹筒に挿された立派な花束も手向けられていたました。
信仰の道だったのでしょうか、崖に沿って同様の穴が幾つかあって、
それらの中には小石や木札などが安置されていました。
何もない穴もありましたが、以前には何か安置されていたのだろうと思われます。
姿形はみんな小振りですが、信仰する気持ちは大きいようでした。
鴨の入浴
高台にある民家の玄関先で見かけました。
素焼きの鉢一杯に季節の花が植えられていました。
よく見ると、その中から鴨が頭を出していました。
どうしてこんな所に鴨が?と思いましたが、すぐに造り物だと分かりました。
まるで、花を浮かべたお風呂に浸かっているように思えてきました。
まだまだ寒い早春なので、暖を取っているのでしょうか。
綺麗な花々に囲まれて、何とも気持ち良さそうでした。
頭を出す亀
山道で見かけた直径10cmほどの猿の腰掛です。
太い樹木の幹の少し窪んだ所にひとつだけ生えていました。
亀が甲羅から頭を少し出しているように思えて、一瞬ビックリしました。
こんな所に亀がいる訳はないと思って落ち着いて見てみると、
猿の腰掛だと判ってホッとしたのでした。
担子菌類に属する厚くて固い木質をしたキノコの仲間で、
上面は褐色で同心円状の紋様があり、下面は白色をしていました。